ロードマップの罠  ~『イノベーションを興す』から~

イノベーションを興す.png 今日、とても大きなニュースが流れました。

 「経営再建を模索していた半導体大手エルピーダメモリは27日、会社更生法の適用を東京地裁に申請した。・・・パソコンなどに使われるDRAMの市況悪化や円高で業績が急激に落ち込んだ・・・負債総額は4480億円。製造業の経営破たんでは過去最大の負債額」

 伊丹敬之氏の書かれた『イノベーションを興す』には、

 「日本の新製品づくりがどうして壁にぶつかってしまったのか?」

 1960年代から80年代まで、あれだけ元気だった電機・電子の製造業が、なぜ、今のような惨憺たる状態になってしまったのか?」

・・・といった疑問に対する「考えるヒント」「腑に落としてくれる示唆」が示されています。

 

 このニュースが流れたとき、クリステンセン他の方が書かれた『イノベーションのDNA』に対比したく、日本の学者が書いた何冊かの書籍を読み直していました。その中の一冊、伊丹敬之氏の書かれた『イノベーションを興す』が、日本の半導体企業がはまり込んでしまった『罠』についてかなり率直に、そして鋭く解釈されていることに、あらためて気づきました。

 

 腑に落ちた一節(第1章 筋のいいテーマを嗅ぎ分ける 「ロードマップのウソまこと」)から抜書きしてみます。

 ・・・「魅力的な技術の未来像を科学的知見のある人々がコンセンサスとして描いたもの」というのが、技術ロードマップの一般的な定義であろう。しかも、技術発展の道筋を時間軸を明らかにしながら描こうとする。いわば、特定分野の技術発展の未来図である。

 そうした共通理解が技術発展のために協力し合うべき人々の間で作られることには、それなりの効果があるだろう。お互いに自分は何をしなければならないか、了解し合えるからである。

 また、筋のいい技術テーマを嗅ぎ分ける立場の人にとっても、多くの識者が技術の将来をどう見ているかという情報源としてロードマップは参考にはなるだろう。どんな技術課題を最終的には乗り越える必要があるかについての情報源としても、意味が大きいだろう。

 これらのメリットは、ロードマップについての「まこと」である。しかし、ロードマップにはウソも多い。

 ・・・

 たとえば、企業の中で本社などの「権威がある」と一応思われている部署が自社の技術ロードマップなるものを企業全体の将来戦略の資料として作ると、それが実際に技術テーマの具体的プロジェクトを選択しなければならない人々にまるで天から降ってくるように下ろされてくる。これが、「この路線で考えよ」という暗黙の指示になる。結果として、現場の嗅ぎ分け努力の邪魔をする。さらに、そうしたロードマップが下りてくるのに慣れてしまうと、自分で地図を作り、自分で嗅ぎ分ける、という能力の育成にもマイナスになる。自分の頭で悩まないことには、力はつかないのである。

 その上具合の悪いことに、ロードマップには「この時点までにこうした技術が開発される」という時間入りのマイルストーンがあるのが常である。それが、技術開発活動を管理しようとする側から見れば、じつに好都合なのである。「そのマイルストーンを守れたか」が、管理指標になるからである。したがって、管理される側はマイルストーンを守ることを至上命題にしかねない。ロードマップが現場を縛るようになるのである。

 しかも、開発活動をする本人たちに「自分のロードマップを書け」という指示が上から来るようになると、ロードマップのウソも極まってくる。 ・・・自分のロードマップとはしばしば、「開発における目標管理の指標」になってしまっている。・・・ロードマップといういかにもきちんとした予測かのごとくの「発展経路の道筋」として、時間軸入りで描かせようとして、それで管理しようとするのが、間違いなのである。

 

 そもそも研究開発活動とは、未知の世界絵の探索活動である。何が出てくるか分からないからこそ、開発が必要なのである。その成果を、事前に成功時点まで含めてきちんと描けというのは、研究開発活動の本質からずれている。

 現場で筋のいい技術テーマを嗅ぎ分けようとしている人が作るべきは、自分なりの技術の俯瞰図である。自分が開発しようとする技術テーマとその関連技術についての全体的発展の予想としての俯瞰図である。・・・科学原理と社会の動きの原理の両方を考えた上で作られるべき大きな地図である。

 

 皆様はこの文章を読んでどんなことを感じられたでしょうか?

 

 今、われわれが拓かなければならない「イノベーションへの道」とは真逆の道を、長い間、放浪してきてしまったのでは・・・と、私は感じております。

 

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